2026年度診療報酬改定では、在宅医療・訪問看護の評価体系が大きく見直されました。
変化の方向性を簡単に言うと、「重症者対応」「24時間体制」「多職種連携」を手厚く評価し、「同一建物への集中訪問」への評価を細分化・厳格化するというものです。
こうした見直しは、今回限りの点数調整ではないと見ておいた方がいいと考えます。
なぜなら、本改定の見直しは、2040年に向けた「入院医療の縮小」と「在宅需要の拡大」という構造的な変化を前提にしているからです。
本記事では、この転換が起きた背景と具体的な制度変化を整理したうえで、医療機関(運営・人材配置・育成面)と従事者(キャリア面)それぞれの観点から、何を考える必要があるかを整理します。
なお、本記事の内容を含め、医療・介護系サイト「ジョブメドレー」を運営するメドレー社から取材を受けました。以下のリンクから記事が閲覧できますので、併せてお読みください。
▶ 取材記事:「【2026年度診療報酬改定】給料や仕事内容、働き方はどう変わる?現場の疑問に専門家が回答」(ジョブメドレー)
「量から質へ」——この転換が起きた背景

人口動態の変化と在宅需要の見通し
2040年に向けて、在宅医療の需要は大幅に拡大する見通しです。
団塊ジュニア世代が65歳以上となり高齢者人口がピークを迎えるなかで、75歳以上の訪問診療需要は現在より大幅な増加が見込まれています。
多くの二次医療圏で、そのピークは2040年以降に到来すると予測されています。
新しい地域医療構想で「入院医療の縮小」がテーマの一つとなったことからも、今後、急性期病院の絞り込みと病床削減が加速することが見込まれます。
病院から退院した患者が地域包括ケア病棟や在宅へ流れ込む「病院完結から地域完結へ」という流れのなかで、在宅医療が担う役割は今後さらに拡大します。

これまでの在宅ビジネスモデルの問題
これまで、在宅需要の拡大とともに、特定の高齢者向け住宅に集中訪問し、件数を積み上げることで収益を確保するモデルが広がってきました。
この言わば「効率重視モデル」は、短時間で多くの患者を回ることを前提としていた側面があります。
そのため、一人ひとりの患者への「対応の質」という観点から、制度上の課題として認識されてきた経緯があります。
訪問看護についても同様に、同一建物への集中訪問への依存が、訪問の質の担保という点で問題視されてきました。
今回の改定で示された以下の項目は、こうした背景への直接的な対応だと考えます。
- 訪問看護基本療養費(Ⅱ)等を算定する場合の訪問時間が30分以上を標準とし、20分未満は算定不可とされたこと
- 記録書への訪問開始・終了時刻の記載が義務化されたこと
今回の改定が示す方向性
これらの経緯を踏まえると、今回の改定は在宅医療の評価軸を「量」から「質」重視へ転換していることが見て取れます。
「重症者対応・看取り・24時間体制」を整えた事業者への評価を手厚くする一方、同一建物への集中訪問への評価を細分化・厳格化しています。
この方向性を象徴するのが、以下に見られる名称変更と要件・評価の見直しです。
「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」
⇒ 「在宅医療充実体制加算」
これはただの名称変更ではなく、評価の対象を「緩和ケアに積極的な施設」から「地域の重症在宅患者に対して質の高い診療を行える施設」まで広げたことを意味します。
「重症者対応・看取り・24時間体制」、それに「多職種連携」という要件を満たした施設への評価は、前回改定と比較して大幅に引き上げられています。

具体的に何が変わったか——在宅医療・訪問看護の評価の変化

在宅医療充実体制加算の新設
前述したとおり、これまであった「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」が「在宅医療充実体制加算」に名称変更され、要件と評価が見直されました。


改めてどのような変化があったのか、施設基準の主なポイントを整理していきます。
- 充実した人員体制
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- 在宅医療を担当する常勤換算医師数3名以上かつ常勤医師2名以上の配置
- 自院単独で24時間連絡体制および往診体制を確保していること
- 実績要件
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- 過去1年間の緊急往診30件以上かつ看取りと小児在宅患者数の合計30件以上
- 重症患者(別表第8の2)と終末期患者の合計が診療患者全体の2割以上
- 緩和ケア研修を修了した常勤医師の配置など
- ICT活用・多職種連携
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- 在宅医療情報連携加算に係る届出が要件に含まれる
- 大幅な点数変化
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- 在宅時医学総合管理料における単一建物診療患者1人の場合、旧加算の400点から800点へ
- 施設入居時等医学総合管理料では300点から600点へ
- 単一建物診療患者が増えるほど点数が逓減する構造は維持されつつ、すべての区分で点数引き上げ
- ターミナルケア加算については1,000点から2,000点へ
- 要件緩和(疑義解釈(その4))
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- 重度認知症患者(認知症自立度ⅣまたはMに該当し、意思決定支援を継続的に行いつつ直近3か月以内に関係機関と情報共有・連絡調整を行った患者)への対応実績がある場合、重症患者「2割以上」の要件が緩和される
訪問看護の評価見直し
訪問看護のトピックスは、同一建物居住者等への訪問看護の見直しにより、人数や訪問日数に応じた評価が細分化されたこと、また、頻回訪問を1日当たりで算定する「包括型訪問看護療養費」の新設です。

以下、訪問看護における評価見直しのポイントを整理していきます。
- 同一建物居住者への訪問看護
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- 訪問看護基本療養費(Ⅱ)等を算定する場合の訪問時間は30分以上を標準とし、20分未満は算定不可とされた
- 記録書への訪問開始・終了時刻の記載が義務化された
- 月の訪問日数や建物内の訪問看護実施人数等に応じたきめ細かな評価への見直しも行われた
- 精神科訪問看護
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- 支援ニーズの高い利用者を受け入れ、地域の関係機関と連携する体制を整えた訪問看護ステーションへの評価が、機能強化型訪問看護管理療養費において新設された
- ICT活用
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- 他の保険医療機関等の関係職種が、ICTを用いて記録した利用者に係る診療情報等を活用したうえで、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合の評価が新設された(訪問看護医療情報連携加算)
- 「包括型訪問看護療養費」の新設
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- 高齢者向け住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが、当該住まいに居住する利用者に対して24時間体制で計画的または随時の対応による頻回な訪問看護を行った場合の評価として新設された
医療機関が考えるべきこと——運営・人材配置・育成の視点

「入院医療の縮小」と「在宅需要の拡大」という構造的な変化のなかで、病院から在宅への人材流動化は今後加速していく見通しです。
そうした中で、医療機関は何を考えるべきか。
ここでは、
- 運営
- 人材配置
- 育成
の3つの視点から解説していきます。
視点1:運営
本改定における「在宅医療充実体制加算」への名称変更に伴う点数の大幅引き上げは、要件を満たせる事業者とそうでない事業者の収益格差を広げることを意味します。
単一建物診療患者1人の場合、在宅時医学総合管理料が「400点」から「800点」へと2倍になりますが、要件を満たすことができなければ、当然この恩恵を受けることができません。
同一建物への集中訪問に依存してきた事業者にとっては、「重症者対応・看取り・24時間体制」への転換が運営上の課題になります。
特に外部人材に依存していた事業者にとって、この転換は、短期間で実現できるものではありません。
①医師の確保 ⇒ ②体制整備 ⇒ ③実績の積み上げ
という段階的なプロセスを踏む必要があります。
現在の自院の体制と要件のギャップを把握し、どの時点で要件充足を目指すかを計画的に検討することが先決です。
さらに、「業務継続計画(BCP)の策定及び定期的な見直し」が「在宅療養支援診療所・病院」の要件として追加されたことも、運営面での対応事項として確認が必要です。
「BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと」
引用:中小企業庁HP「中小企業BCP策定運用指針」より
※以下は、厚生労働省のBCP策定支援資料
視点2:人材配置
「在宅医療充実体制加算」取得において、特に大きなハードルになるのは、医師の配置要件(常勤換算3名以上・常勤2名以上)だと考えます。
要件を満たすための医師確保を単独で行うことが難しい場合は、
- 在宅療養支援病院との連携
- 医師派遣の仕組みの活用
などの選択肢も検討対象になるでしょう。
訪問看護ステーションにおけるICT活用(在宅医療情報連携加算)を実装するには、ツールの導入だけでなく、他の保険医療機関との情報共有の仕組みを構築するための「人材と環境の整備」が前提になります。
以下の2026年度診療報酬改定の各論記事②で整理したとおり、ICT導入は業務フローの再設計とセットで進める必要があります。

視点3:育成
病院から在宅へ移行する職員が増える見通しのなか、病院勤務経験のみの医療スタッフに対して、いかに在宅医療に適したスキルの再習得を支援する体制を整備できるかが重要になります。
病院での勤務経験が長い職員ほど、在宅特有の「一人で判断する場面」への対応に時間がかかることがあります。
病院出身者の定着を図るには、以下の取組が必要です。
- オンボーディング(早期戦力化)の仕組み化
- 先輩職員によるOJTの体制明示
- 特定行為研修の支援 など
特定行為研修修了者の育成・確保は、本改定でコスト算定の明確化が示された「D to P with N」の実施体制の強化にもつながります。
研修受講のための時間確保と費用負担を組織として支援するかどうかが、人材確保面における他院との競争力に影響するはずです。
在宅医療充実体制加算の施設基準にも、地域医療実習の受け入れや専門研修医の受け入れなど、過去2年度以内における「医師等の教育実績」が要件として含まれています。
このように、教育機能の整備は加算取得の観点からも重要になります。
従事者が考えるべきこと——キャリアの視点

病院から在宅への人材流動化の加速が予想される中、実際に現場で働く医療従事者は何を考えるべきなのか。
ここでは、働く側が意識すべきキャリアへの影響について考えていきます。
在宅医療・訪問看護へのキャリアシフトをどう考えるか
病院から在宅へのキャリアの移行を、以下のどちらの動機で行うかによって、その後医療従事者が辿る「キャリアの質」に影響を与えると考えます。
- 「病院の病床が減るから在宅へ」という受け身の動機で行うのか?
- 「在宅医療という専門領域を自律的に選ぶ」という動機で行うのか?
在宅医療は病院と異なり、訪問スタッフ一人で判断する場面が多く、医師への即時の相談が難しい状況で対応することが求められます。
この環境に適応するには、病院での経験をベースにしつつも、在宅特有のスキルを意識的に習得するプロセスが必要です。
組織として自律的なキャリア選択をしたスタッフを受け入れ、スキル再習得を支援する体制があるかどうかは、医療従事者にとって職場選びの基準としての重要な要素になります。
今後求められるスキルの変化
今回の改定が評価軸を「質重視」に転換したことは、訪問看護師やセラピストに求められるスキルの内容にも当然影響を与えると考えた方がいいでしょう。
筆者が考える今後必要になるスキルは以下の4点です。
- ①患者・家族への教育・指導スキル
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患者宅への訪問頻度が減るなか、より重要性が高まるのは、患者・家族への教育・指導スキルです。
訪問回数が減っても安定した在宅生活を維持するには、患者自身の自己管理能力を高める関わりが必要で、その支援を担う看護師の役割は自然と大きくなります。
- ②より質の高いアセスメント能力と言語化スキル
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限られた訪問時間の中では、患者の微細な変化を捉え、医師や多職種に的確に伝えるアセスメント能力と言語化スキルも、質重視の評価体系のなかでより重要になります。
以下のような仕事のスタイルの転換も求められるでしょう。
「決まった処置を時間内に終える」スピード重視のスタイル
⇒ 患者の状態を専門的視点で評価し、ケアの方向性を言語化して対応するスタイル
- ③ICTを活用した多職種連携の調整力
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「在宅医療情報連携加算」が施設基準に組み込まれたことからも、ICTを活用した連携やスタッフ間の調整力、ITリテラシーが重視されるようになりました。
タブレットやチャットツールを活用してリアルタイムで医師やケアマネジャー、薬剤師と情報を共有する能力は、医療従事者個人のキャリアとしても評価される要素になります。
- ④ACPに関わる高度なコミュニケーション力
-
ACPへの関与も、質重視の在宅医療において重要なスキルになります。
患者の価値観に寄り添う深いコミュニケーション能力が、これからの在宅医療従事者が持つべき「専門性」の核になるはずです。
限られた時間内に、患者の「どう生きたいか」という意思決定支援に踏み込む能力は、在宅医療の専門性の一つとして制度上も評価される方向にあります。
「ACPとは、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略称で、もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、ご家族や医療・ケアチームなどと繰り返し話し合い、共有する取り組みのこと」
2026年度診療報酬改定を取り上げた各論記事③では、本改定で新設された「看護・多職種協働加算」の運用ポイントと職種間コミュニケーションの設計実務を解説しています。

以下の記事では、患者対応におけるコミュニケーション能力と傾聴スキルの重要性を解説しています。

職場選びの視点
在宅医療・訪問看護に携わる職場を選ぶ際、また、今の職場の将来性を見極める際に見るべきチェック事項を、①経営の安定性、②働きやすさ、③専門性の向上、の3点から整理します。
- ①経営の安定性
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- 同一建物への訪問に過度に依存していないか
- 重症患者への対応・看取り・24時間緊急対応体制が整っているか
- 「在宅医療充実体制加算」の要件充足に向けた具体的な取り組みがあるか
- ②働きやすさ
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- ICTを活用した業務効率化の仕組みが整っているか
- 医師やセラピスト、介護職等と日常的に連携できるチーム体制があるか
- ③専門性の向上
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- 特定行為研修の支援など、スキルアップ支援体制が整っているか
- 「ベースアップ評価料」を活用した賃上げが具体的に実施されているか
本改定の目玉であるベースアップ評価料を活かした賃上げの対応実務について、以下の各論記事①で詳しく解説しています。

なお、業務効率化のためICT導入には、その前提として心理的安全性が保たれた組織文化の定着が必要です。以下の記事で、医療現場に心理的安全性の考えを根付かせるための実務設計を解説しています。

自律的なキャリア形成と学びを促す医療機関・事業者の取り組み事例
前の章で整理したスキルの変化への対応は、個人の努力だけでは困難です。
最後に、「組織的な研修による人材育成・ACP実践の体制化」という観点から、参考になる取り組み事例を3件紹介します。
事例①:上尾中央総合病院(埼玉県上尾市)——特定行為研修の継続的な人材育成
始めに、特定行為研修により継続的な人材育成に取り組む医療機関の事例を紹介します。
近年、訪問看護ステーションからの受講者が増加していることを受け、在宅領域に特化したコースを新設するなど、地域の在宅医療を支える人材育成拠点として機能しています。
【取組内容】
- 毎年30〜40名規模で研修を継続し、10年間で修了者200名以上を輩出
- 2026年4月より「領域別パッケージコース(在宅・慢性期領域)」を新設
- 研修修了者向けに定期的なブラッシュアップセミナーを開催し、シミュレーターを用いた技術確認・実践報告・修了者間の情報交換の場を設ける
- 修了後も実践につなげるフォローアップ体制を組織として整備
特定行為研修は受講して終わりではなく、修了後の実践定着と技術のブラッシュアップまでを組織として支援する仕組みが必要です。
事例①に見られた「在宅領域への対応を見据えたコース設計」は、人材育成の計画を立てる際の参考になりそうです。
事例②:おうちのカンゴ(訪問看護ステーション)——自社スタッフ以外にも開放した学びの場づくり
次に、訪問看護ステーションが自社スタッフに限らず、地域の人材育成拠点としての役割を担っている事例です。
「学ぶ意欲の高い看護師に学びの場を提供することで地域社会に貢献する」という方針を事業所として明示している点が特徴です。
【取組内容】
- 自社スタッフだけでなく、他の訪問看護ステーションで働く看護師にも実習の場を提供
- 講義・演習はeラーニングで受講可能な体制を整備し、通勤時間など隙間時間での受講を支援
- 受講希望者には血糖コントロール区分から開始し、翌年度以降に創傷管理・在宅慢性期へと段階的にステップアップできる習得ルートを設計
- スタッフ本人の自発的な研修参加意欲を組織が後押しする制度設計
上記からは、スタッフの自発的な学びの意欲が、組織のリスキリング文化の醸成につながっている側面が伺えます。
事例②に見られるように、eラーニングの活用により、働きながら受講できる環境が整っている事業所も増えています。受講を検討する際は、職場に実習環境があるか、または近隣の指定研修機関と連携しているかを確認することが出発点になります。
事例③:医療法人社団ききょう会(東京都・埼玉県)——ICTを活用したACPの組織的実践
最後に、訪問診療・在宅医療専門の医療法人が、医療介護専用SNSを活用してACPを組織的に実践している事例を紹介します。
患者の意思決定支援を特定の職種や個人の力量に依存させず、情報共有の仕組みとして制度化しています。
【取組内容】
- 医師・訪問看護師・ケアマネジャー・歯科医師・薬剤師が医療介護専用SNS「MCS(メディカルケアステーション)」でセキュアに繋がり、テキスト・写真でリアルタイムに情報共有
- 往診報告を写真付きで患者家族と共有し、外出先の家族も含めた情報共有を実現
- 職種間でケアの方向性に意見の相違が生じることを前提に、患者の価値観・意向を多職種で共有するプロセスを組織として設計
- 「言葉の見える多職種連携」を日常業務として定着させる体制を構築
ACPを組織的に機能させるには、個々の看護師のコミュニケーション能力に依存するだけでなく、情報を記録・共有する仕組みが重要です。
ただし、ICTツールの活用はあくまでも手段であって、「誰が・いつ・どの情報を共有するか」を事前に決めておくことが定着の前提になりそうです。
引用:
3つの事例からの学び
3つの事例に共通するのは、学びや実践の仕組みを組織として設計している点です。
個人の意欲だけに依存せず、
- 受講環境
- フォローアップ
- 情報共有のルール
を組織が整えることで、従事者のキャリア形成が継続的に支援されます。
自院での取り組みを検討する際は、「何を個人に任せ、何を組織として整備するか」を区別することが出発点になります。
まとめ

2026年度改定が在宅医療・訪問看護に示した
- 重症者対応・24時間体制・多職種連携への評価
- 同一建物への集中訪問に対する評価の細分化・厳格化
という方向性は、2040年に向けた「在宅需要の拡大」と「入院医療の縮小」という構造的な変化に沿ったものです。
この方向性は、今後も継続するものと考えたほうがいいでしょう。
最後に、医療機関と医療従事者それぞれの課題をまとめます。
- 在宅医療充実体制加算の要件充足に向けた計画的な体制整備と、人材の確保・育成
- 同一建物への集中訪問に依存してきた事業者については、収益構造転換の早期検討が必要
- そのためには、現状と要件のギャップの把握、段階的に進めるための計画立案が出発点
- 在宅医療への移行を受け身ではなく、自律的なキャリア選択として位置づけ、長期的な専門性の向上につなげていく
- 「質重視の評価体系が求めるスキル」(アセスメント能力・教育・指導スキル・ICT活用・ACP対応)は、在宅医療における専門職としての価値を高めることを認識する
在宅医療充実体制加算の取得は、確かにハードルが高いことも事実です。
しかし、今回の改定を皮切りに、在宅医療・訪問看護の評価軸は、今後も「質・誠実さ」重視へと進んでいくものと思われます。
そのなかで、まず自院ができることとしては、医療従事者が本来の専門性を発揮し、「働きがいの向上」につながるような職場環境を提供して、在宅医療・看護の質をより高めることにあると考えます。
同様に、従事者個人としては、この先職場から求められるスキルの変化に対応し、自分のキャリアを自律的に選択しながら、医療技術はもとよりアセスメント能力・コミュニケーション能力の質をより高めていく視点が重要です。
次の記事では、2026年度診療報酬改定で加速する病院の機能分化を、新たな地域医療構想の方向性とあわせて解説します。
なお、本記事のテーマである在宅医療の方向性を含めた2026年度診療報酬改定の5つの論点について、以下の総論記事で解説しています。

