医療スタッフの働きがいを高めて、医療機関の価値を高める方策とは

「やりがい」と書かれたイラスト

コロナ禍を経て、働く人の価値観の変化や、働き方の多様化が起きています。

産業構造が急激に変化するなか、企業は人的資本経営に乗り出し、従業員の働きがいを喚起し、個の価値の最大化を図ることで持続的な企業価値の向上を目指しています。

医療機関にとっても、人材の価値の向上は重要な課題と言えます。とは言え、常に人手不足を抱えている医療機関においては、スタッフの働きがいを喚起するところまで手が回らない、というのが現状なのではないでしょうか。

今回は、医療スタッフの働きがいを向上させるための着目点や対応策について考えてみたいと思います。

目次

働きがいのポイントは、「信頼関係」と「主体性」

「働きがい」とは

そもそも「働きがい」とは、働くことによって得られる価値や喜びを指します。

スタッフが働きがいを感じる状態というのは、

  • 医療機関とスタッフが互いに信頼し合っていて
  • スタッフが主体的に仕事に取り組むことができている状態

を言うのだと考えます。

医療スタッフに対して主体的に仕事に取り組む姿勢を促すには、内発的動機付けが有効です。以下の記事で詳しく解説していますので、是非ご参考ください。

内発的動機付けとは…
仕事そのものの楽しさや有能感、満⾜感、⾃己決定の感覚など、自分の内から湧き上がるもの

「働きがいがある職場」と「働きやすい職場」はどう違うのか

「働きがいがある職場」と「働きやすい職場」も違います。

「働きやすい職場」の特徴としてよく挙げられるのは、

  • 給与の条件がいい
  • ワークライフバランスが取りやすい
  • 福利厚生が整っている
  • 職場の雰囲気がいい

というように、勤務条件や職場環境の良さを表すことが多いです。

それに対し、「働きがいがある職場」とは、

職場の中でスタッフが期待されていて、「自分は役に立っているんだ」という自己効力感が持てる職場

を言うのだと考えます。

日本医療機能評価機構の「職員やりがい度調査」から考察する

公益財団法人日本医療機能評価機構が発行した、2022年度「患者満足度・職員やりがい度 活用支援プログラム【年報】」から、「職員やりがい度」について確認していきたいと思います。

上記のプログラムは、同機構が2018年度から毎年行っているもので、2022年度は、2022年7月から12月までの期間に329病院が参加しています。

職員やりがい度調査については、そのうちの226病院が集計対象となり、各質問項目に対して、1点から5点の5段階評価で回答を行っています。

ここでは、「職種別平均得点比較」から、やりがい度の状況を確認し、考察していきたいと思います。

スクロールできます
公益財団法人日本医療機能評価機構・2022年度「患者満足度・職員やりがい度 活用支援プログラム【年報】」より筆者作成
 

manzokudo_nenpo_2022.pdf (jcqhc.or.jp)

公益財団法人日本医療機能評価機構ホームページより引用

考察①:全職種で得点の高い項目を探る

まず、「全体」(全職種)で得点の高い項目から確認したいと思います。

全体で得点が最も高い項目は、

  • 雰囲気や人間関係 3.7点
  • 仕事のやりがい 3.7点
  • 上司への信頼 3.7点

となっています。

考察②:全職種で得点の低い項目を探る

次に、「全体」(全職種)で得点の低い項目を見てみたいと思います。

全体で得点が低い項目は、

  • 処遇条件 2.9点
  • 精神的不安 2.9点
  • 総合評価 3.0点
  • 医療介護の質  3.1点

となっています。

考察③:項目ごとに得点の低い職種を探る

さらに、得点の低い項目については職種間での得点のバラツキが目立ちますので、項目ごとに得点の低かった職種もみていきます。

  • 処遇条件
    看護師2.7点、事務2.8点、薬剤師2.9点、その他2.9点
  • 精神的な不安
    看護師2.7点、薬剤師2.8点、事務2.8点
  • 総合評価
    看護師2.8点、事務2.8点、薬剤師2.9点
  • 医療介護の質
    事務2.8点、看護師2.9点

「精神的な不安」は全体でも最低の2.9点、なかでも看護師が2.7点と最も低い点数を示しています。以下の記事では、医療現場で精神障害が増えている現状について解説していますので、併せてご参考ください。

医療機関にとっての胆は、「大事な人に薦められるか」

「総合評価」と「医療介護の質」をいかに上げていくか

職員やりがい度調査の結果によると、医療従事者にとって、どのようなことが働きがいにつながっているのか、その傾向がわかります。

表中の質問項目のうち、医療機関にとって胆になるのは、

  • 総合評価(全体3.0点)
  • 医療介護の質(全体3.1点)

の2項目になると思います。

この2項目の質問内容は以下のとおりです。

「総合評価」に関する質問

「〇〇〇〇(病院名)を職場としてすすめようと思いますか?」

「医療介護の質」に関する質問

「病院・施設として、知人にすすめようと思いますか?」

この2つの質問は、「総合評価」が全体で3.0点、「医療介護の質」が全体で3.1点と、高くもなく低くもない点数となっています。この2項目の点数をいかに上げていくかが、医療機関にとっての課題とも言えます。

職場への信頼、愛着の度合いを示す

胆になる「総合評価」と「医療介護の質」の点数は、どのような意味合いを持つのでしょうか。

この2項目の点数は、スタッフが職場に対して感じる信頼や愛着の度合いを示していると考えます。

つまり、医療機関が組織的な改善の取り組みを行い、この2項目以外の点数を上げ、スタッフから信頼や愛着を感じてもらうことができれば、胆となる「総合評価」と「医療介護の質」の2項目の点数もおのずと上昇してくることが想像できます。

自院に対する信頼・愛着は、スタッフの「働きがい」につながります。そして、医療機関自体の価値向上を図ることができます。

医療機関自体の価値が向上すれば、スタッフの定着率向上や、外部からの円滑な人材登用が可能になります。

医療従事者の働きがいを向上させる3つのポイント

それでは、スタッフの働きがいを向上させるには、具体的にどのような手順を踏めばいいのでしょうか。

前述の職員やりがい度調査の結果を参考に、以下の対応を考えてみたいと思います。

ポイント①:全職種で高い得点項目をより向上させる

まず、全職種をとおして得点の高い項目に着目します。

これらの項目に対する向上策を経営戦略に組み込んで、さらに評価を伸ばしていきます。

雰囲気や人間関係」を向上させるには?

定期的に、院長の想いや病院の方針をスタッフにアナウンスすることや、経営層とスタッフが直接対話の機会を持つことにより、オープンで風通しのいい雰囲気をつくっていきます。

オープンで風通しのいい職場は、スタッフに心理的安全性をもたらします。以下の記事では、職場の心理的安全性の高め方について解説していますので、併せてご参考ください。

仕事のやりがい」を向上させるには?

公平公正な評価制度の導入や、目標管理制度を取入れ、上長との振り返りの機会を設けて、スタッフのモチベーションを上げていきます。

医療従事者に対するモチベーション管理についても、以下の記事で解説しています。是非ご参考ください。

上司への信頼」を向上させるには?

年1~2回の定期面談だけではなく、「1on1」ミーティングを毎月行うことや、普段からの意識的な声掛けにより、互いの信頼関係を向上させます。

1on1ミーティングの導入施策については、以下の記事で解説していますので、是非ご参考ください。

ポイント②:全職種で低い得点項目を改善する

次に、全職種をとおして得点の低い項目に着目します。

その中でも特に得点の低い職種に絞ってケアを行い、評価の底上げを図ります。

処遇条件」を改善させるには?

評価制度や目標管理制度を取り入れ、給与や賞与に反映させることで、公平公正な処遇を行います。

また、上長とスタッフとの対話の機会を増やし、スタッフの想いを汲み上げる仕組みを作ります。

精神的な不安」を改善させるには?

上長とスタッフとの対話の機会を増やすこと、スタッフ同士で話し合う機会を設け部署における心理的安全性を確保すること、メンタルヘルスの相談窓口を設置することが挙げられます。

精神的な不安に対処するためのストレスマネジメントについて、以下の記事で詳しく解説しています。是非ご参考ください。

ポイント③:①・②の取り組みをとおしてスタッフの働きがいを向上させる

①と②による改善の取り組みを行い、スタッフ自身の職場に対する信頼や愛着の度合いが高まれば、全体的な評価項目の点数も向上します。

そして、医療機関にとっての胆となる「総合評価」と「医療介護の質」の評価も上がり、スタッフが自院に対して感じる「働きがい」を向上させることができます。

本記事のまとめ

今回の記事の内容につきまして、以下のとおりまとめたいと思います。

  1. スタッフの価値を向上させるには、スタッフに働きがいを感じてもらうことが大事。
  2. 働きがいとは、働くことによって得られる価値や喜びを指す。
  3. 医療機関とスタッフが互いに信頼し、スタッフが主体的に仕事に取り組むことができている状態が、働きがいを感じている状態。
  4. 医療機関にとっての胆は、「総合評価」(大事な人に薦められる職場か?)と「医療介護の質」(大事な人に診療で薦められる病院か?)の2項目。
  5. 全職種をとおして点数の高い項目は、経営戦略に組み込んで、さらに評価を伸ばしていく。(「雰囲気や人間関係」・「仕事のやりがい」・「上司への信頼」)
  6. 全職種をとおして点数の低い項目は、特に点数の低い職種からケアを行い、評価の底上げを図る。(「処遇条件」・「精神的な不安」)
  7. 上記の取り組みにより、信頼や愛着を感じてもらい、「総合評価」と「医療介護の質」の点数を上げる。スタッフに働きがいを感じてもらい、自院全体の価値向上を図る。

最後に

今回は、医療スタッフの働きがいを向上させるための着目点や対応策について考えてきました。

筆者も長い間医療機関で働いてきましたが、医療機関の評価は、その医療機関で働くスタッフの声に表れることが多いと思います。

  • 自分の大事な人に薦められる職場か?
  • 大事な人に診療を薦められる医療機関か?

自院のスタッフから評価の高い医療機関は、これから先も医療機関としての価値を向上し続けられる可能性が高いと考えます。

今回の記事が、少しでも何かのお役に立てば幸いです。

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この記事を書いた人

吉澤社労士事務所代表。社会保険労務士、健康経営アドバイザー、ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)。医療機関で25年間事務職に従事。総務、経理、医事、健診部門など幅広く経験を積み、2024年4月に独立。地元・東京都日野市にて医療機関専門社労士として活動中。
医療機関や医療従事者の方々へのお役立ち情報を発信しています。今後ともよろしくお願いします。

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