医療機関においてモチベーション管理が重要となる理由とは

人はなぜ働くのでしょうか。

お金を増やすため、生活を守るため、やりがいを感じるため、社会に貢献するため。

答えは人それぞれ違うと思います。性別や年代でも答えは変わってきます。

今回は、仕事に対する価値観や、組織におけるモチベーション管理の重要性について考えていきたいと思います。

目次

年代で異なる仕事の価値観

仕事に対する価値観は、年代によって異なると言われています。

いま、組織で管理職を任されている50代は、団塊ジュニア世代とか、氷河期世代とも言われる年代です。この年代は、言わば会社に身を捧げ、転勤もいとわないような、仕事優先の働き方をしてきた方も多いと思います。

一方、いまの若い世代は、相対的に、ワークライフバランスを重視し、社内の昇進より自己の有意義なキャリア形成を志向する人が多いとも言われています。

「働き方に関するアンケート調査」から実態を探る

ここでは、明治安田総合研究所が行った「働き方に関するアンケート調査」(2023 年 10 月、20 歳以上 69 歳以下の男女 1,800 人対象)を参考にみていきたいと思います。

仕事を選ぶうえで重視することは?


仕事を選ぶうえで重視すること(上位3つまで)」の質問に対して、回答は以下のとおりとなっています。

スクロールできます
全体男性女性20代30代40代50代60代
収入64.368.959.760.663.169.463.664.7
仕事内容57.759.356.150.653.959.762.262.2
やりがい36.643.729.432.538.636.936.138.6
勤務時間31.226.735.824.229.231.734.436.7
勤務地24.619.929.216.718.327.830.030.0
特に条件はない18.716.920.433.920.011.915.611.9
福利厚生13.912.914.916.718.111.712.510.6
専門性が活かせる13.416.210.718.314.211.410.013.3
勤務体制11.17.814.311.79.710.011.112.8
スキル・能力を伸ばせる10.812.19.416.412.57.29.28.6
明治安田総合研究所「働き方に関するアンケート調査」(一部抜粋・筆者作成)(単位:%)

全体で最も回答の多かった選択肢は、「収入」でした。その後に続くのは「仕事内容」、「やりがい」となります。

2023年 働き方に関するアンケート調査 | 調査研究・レポート | 明治安田総合研究所 (myri.co.jp)

性別による回答の違い

男女で回答に差が出たのは、「やりがい」、「勤務時間」、「勤務地」の回答です。表の内容を簡単にまとめます。

●男性は、女性と比較すると、仕事に「やりがい」を求める傾向にある

●女性は「やりがい」と同等以上に、「勤務時間」や「勤務地」などの勤務条件面を求める傾向にある

年代による回答の違い

年代で回答に差が出たのは、「専門性が活かせる」、「スキル・能力を伸ばせる」、「収入」、「勤務時間」の回答です。表の内容を簡単にまとめます。

●20代・30代は、「専門性が活かせる」や「スキル・能力を伸ばせる」といった今後のキャリア形成を意識した回答の割合が高い

●50代・60代など、年代が上がるにつれ、「収入」や「勤務時間」などといった勤務条件面を重視する傾向にある

「やりがい」重視は全世代共通

やりがい」については、他の回答ほど年代でのバラツキはありません。

仕事に「やりがい」を求めているのは、年代に関わらず誰しもが感じていることなのかも知れません。

医療従事者が感じる仕事のやりがいとは

それでは、医療従事者は、仕事に関してどう感じているのでしょうか。

日経メディカルプロキャリアが行った「仕事のやりがいに対する意識調査」(2020年5月、日経メディカル Onlineの登録会員332人対象)を参考にみていきたいと思います。

【第10回】仕事のやりがいに対する意識調査 | メディカル業界アンケート集計結果 | キャリアLabo | 日経メディカルプロキャリア (nikkeihr.co.jp)

「やりがいはありますか」

Q.「やりがいはありますか?」

●「頻繁にある」22.6% 
●「時々ある」57.5% 
●「ほとんどない」15.7% 
●「全くない」4.2%

この回答から、8割の方がやりがいを感じていることがわかります。

ただ、やりがいが「ほとんどない」方が15%もいることに少し驚きました。

「仕事にやりがいが必要な理由」

Q.「仕事にやりがいが必要な理由」 TOP5

1位 モチベーション維持・アップのため
2位 給与以外に自分の存在意義が必要だから
3位 仕事/人生・生活への満足度アップに必要だから
4位 社会貢献につながっている実感が必要だから
5位 スキルアップや自己研鑽を促すから

仕事にやりがいが必要な理由として、「モチベーション維持・アップのため」がトップになっています。社会貢献、自己の生活やスキルの向上という理由も上位にあるようです。

医療者は、他者への貢献意欲使命感倫理観が高い方が多いと思いますので、それがあらわれた結果だと思います。

なぜモチベーション管理が重要なのか

組織において、スタッフのモチベーション管理はとても重要です。ここでは、モチベ―ションについて、少し掘り下げてみていきたいと思います。

モチベーションとは

そもそも、モチベーションとは、「目標達成のために努力しようとする個人の意思」と表現できます。

「強さ」、「方向性」、「持続性」の3要素が求められる

そのモチベーションには、「強さ」、「方向性」、「持続性」が求められると言われています。

つまり、良質なモチベーションであるには、その意思が、強いこと、適切な方向付けがされていること、持続されていること、が重要とされています

仕事への向き合い方はスタッフによって様々

現実はと言うと、「上からやらされている仕事」と、「自らやりたくてやる仕事」では、モチベーションが大きく異なるのは言うまでもありません。

スタッフの置かれている環境も様々です。性別、経験年数、業務内容、待遇面、周りのメンバーなどで、各々仕事への向き合い方も変わってくると思います。

スタッフ個々により、「強さ」、「方向性」、「持続性」の3要素すべてにバラツキが出るのは、ある意味仕方のないことかも知れません。

3要素揃ったモチベーション管理で組織力強化を

組織の管理者としては、スタッフに対するモチベーション管理を実践して、エンゲージメントを高め、生産性向上や組織力強化を図る必要があります。

医療機関においては、何より離職防止を図るためにも、3要素揃った良質なモチベーションの維持・向上を図ることが重要です。

モチベーション向上の具体的な方策

それでは、スタッフ個々のモチベーションを向上させるには、どうすればいいでしょうか。

一般に、動機付けには「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の2種類あると言われます。

内発的動機付けとは

内発的動機付けとは、仕事そのものの楽しさ有能感満⾜感⾃己決定の感覚など、自分の内から湧き上がるものを言います。

外発的動機付けとは

外発的動機付けとは、報酬昇進など、自分の外から与えられるものを言います。

医療従事者には、内発的動機付けを行いたい

前述したアンケートの”「仕事にやりがいが必要な理由」 TOP5”でも示されているとおり、そもそも医療従事者は、職業への使命感や社会貢献を仕事のやりがいに感じています。

自律的な働き方を志向する医療従事者に対しては、内発的動機付けを行うことが有効だと考えられます

内発的動機付けを行う際に考えたい「職務特性モデル」

それでは、実際に内発的動機付けを行う際に、何を考えればいいでしょうか。

ここでは、J.R.ハックマンと G.R.オルダムの提唱した「職務特性モデル」を参考に、みていきたいと思います。

職務特性モデルとは

職務特性モデルとは、職務の特性そのものが内発的動機付けに影響を与える、というものです。

簡単に言うと、個人差はあるものの、重要でおもしろい仕事をしているときは、やる気が上がり、活き活きと働ける、というものと言えます。

次に掲げる5つの特性が、モチベーション向上のための重要な要素となると言われています。

①技能多様性

単純作業ではなく、いろいろなスキルが必要な仕事のことを言います。

②タスク完結性

全体像を把握したうえで、一通りの流れに関わることを言います。

③タスク重要性

他者に重要なインパクトを与えるような重要な仕事のことを言います。

④自律性(自己決定)

⾃分なりに⼯夫できる裁量度の高い仕事のことを言います。

⑤フィードバック

自分が手掛けた仕事の手ごたえを感じられること。他者からのものではなく、自分で成果を確認できることになります。

スタッフ個々に合わせた内発的動機付けが理想

ここで何より大事なのは、スタッフ個人個人に適した内容で、きめ細かく内発的動機付けを行うことになります。

医療機関においては、スタッフ数も多く、性別も年代も職種も様々いるなかで、きめ細かく動機付けを行うことは、そう簡単にはいかないと思います。

ただ、スタッフ個々のモチベーションを向上させて、組織力を向上させるには、職務特性モデルを意識しながら、普段の声掛けから動機付けを実践していくことが理想だと言えます。

まとめ

日常業務から、スタッフのモチベーションアップを図ることで、自院の生産性向上や組織力強化につながります。

そして、スタッフが活き活きと働く職場が実現すれば、離職率が下がり、経営の安定化も期待できるでしょう。

今回の記事が、院内のモチベーション管理について考えるきっかけになれば幸いです。

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この記事を書いた人

吉澤社労士事務所代表。社会保険労務士、日本FP協会AFP認定者。医療機関で25年間事務職に従事。総務、経理、医事、健診部門など幅広く経験を積み、2024年4月に独立。地元・東京都日野市にて医療機関専門社労士として活動中。
医療機関に役立ちそうな情報を発信していきますので、今後ともよろしくお願いします。

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