皆さんは、家族や友人との会食などで飲食店を探すとき、どのように探しますか?
友人・知人からお薦めの店を聞いたり、ネット検索して探している方も多いと思います。
ネットで飲食店を探すときに忘れずに行うのが、利用者の口コミチェックだと思います。
飲食店の場合は、まず、料理のおいしさ、品質、量、値段、の評価が気になると思います。次に、店員の対応、店の雰囲気、アクセスの良さなどもチェックするでしょう。
これが飲食店ではなく、医療機関を探すときはどうでしょうか?
今回は、病院口コミサイトから患者が医療機関に求めるものを探り、医療機関が取るべき対応策について考えたいと思います。
口コミサイトで探る「患者が求めるもの」とは?
患者の口コミは病院検索サイトで見れる
今やSNSなどで情報があふれる時代ですので、当然、患者は医療機関の選定に口コミを利用しています。
逆に口コミを見れば、患者が求めるものが見えてくるかも知れません。
患者の口コミは、病院検索サイトから見ることができます。様々なサイトがあると思いますが、ここでは参考までに代表的なサイトを以下の表にまとめてみました。
サイト名 | ホームページ上のキャッチコピー |
EPARKクリニック・病院 | ●「会員数約4,500万人以上」 ●「全国のクリニックや病院を検索&ネットで受付することができます」 |
病院なび | ●「顔が見える安心感 – 2人に1人が利用するお医者さん検索サイト」 ●「全国 22万件以上の病院・医院・薬局を無料で検索出来る、日本最大級の病院・医院・薬局検索サイト」 |
Caloo(カルー) | ●「『最適な医療機関で最適な治療を受けていただく』ための病院口コミ検索サイト」 ●「1日27万人、月間では800万人のユーザがCalooのサービスを利用」 |
ホスピタ | ●「20年以上続く歴史と実績 病院・クリニック検索サイト」 ●「登録医療機関件数7,500件突破!」 |
病院口コミサイト「Caloo」をチェック
前項では代表的な病院検索サイトを挙げましたが、実際、患者が口コミを見る場合、どのような点をチェックするのでしょうか。
考えられるのは、医師の診察内容、スタッフの技量や対応の仕方、施設の雰囲気などがチェック項目になると思われます。
ここでは、前掲の表で取り上げた病院口コミサイト「Caloo」から、医療機関の口コミの一部をみてみたいと思います。
Calooは月間800万人が病院選びに使う、日本最大級の病院検索サイトと言われています。
Calooサイトにおける口コミの特徴は、
- 独立部門が口コミをチェック
- 一方的な決めつけや憶測、誹謗中傷がなく中立的
- 患者の手書きアンケートを掲載することで、信ぴょう性を高めている
などが挙げられます。
なお、別の記事では、患者が医療機関を選ぶ際の口コミサイトの利用方法について書いていますので、よろしければこちらもお読みください。
口コミ頻出ワード上位3位は…?
それではここで、実際の口コミの内容をお知らせしていきたいと思います。
今回筆者が同サイトの口コミをチェックした結果、患者の声として書かれるワードに、ある傾向があることがわかってきました。
直近20人分の口コミで書かれた頻出ワードの上位3位は、以下のとおりとなりました。
なお、今回口コミサイトをチェックした条件は以下のとおりとしました。
- 筆者の地元「東京都日野市」の「内視鏡専門医」で検索
- 上記よりクリニック3箇所を抽出
- 本記事作成時から直近20人分の口コミを集めて内容を簡単に分析
口コミをピックアップして紹介
前掲のとおり、今回の調査で頻出したのは「優しい、安心、丁寧」というワードでした。
それでは実際にどのような表現で医療機関の評価がされているのか、ここで簡単に紹介したいと思います。
同じくCalooのサイトから、いくつかの口コミをピックアップしていきます。
口コミ例①:日野市のAクリニック
まず始めに、日野市にあるAクリニックの口コミ例と、クリニックの概要も紹介します。
丁寧親切に教えていただき、BGMもありリラックスできた。清潔感がある。
初めての胃カメラで不安があったが、痛みやせき込むこともなくスムーズに終わり安心した。
口コミ例②:日野市のBクリニック
次に、日野市にあるBクリニックの口コミ例を紹介します。
先生がとても丁寧で真面目な方。手厳しいことをさらっといわれるがかかりつけ医として最高の先生。
とにかく親切。症状を細かく聞いてくれてじっくり話をするので安心。一方待ち時間が長くなるのはマイナス点か。
口コミ例③:日野市のCクリニック
最後に、日野市にあるCクリニックの口コミ例を紹介します。
初めての胃カメラで不安だったが準備段階で看護師が優しく声をかけてくれて落ち着いた。先生も不安がないよう説明しながらやってくれた。
近所の内科のなかで一番好き。先生が余計なことを言わずにわかりやすく説明してくれる。安心できるから他に移らず通っている。信頼できる優しい先生。
口コミ頻出ワードランキング上位からわかることは?
口コミ頻出ワードをランキング
今回の口コミに関する調査結果を以下の表にまとめました。
調査の母数が20人とかなり少ないので、本当に参考になるかはわかりません。
しかし、「患者が求めるものは何か」、その傾向はわかるかも知れません。
順位 | ワード | 人数 | 割合 |
1位 | 優しい | 13 | 65% |
2位 | 安心 | 11 | 55% |
3位 | 丁寧 | 10 | 50% |
4位 | 話を聴く | 9 | 45% |
5位 | 雰囲気 | 6 | 30% |
6位 | 待ち時間 | 5 | 25% |
6位 | 痛くない | 5 | 25% |
7位 | 立地 | 3 | 15% |
7位 | 専門性 | 3 | 15% |
(「caloo」サイトを参考に筆者作成)
患者は【情緒面】を重視
ご覧のとおり、頻出上位にくるワードは、いずれも【情緒面】を示すワードでした。
ちなみに4位に「話を聞いてくれる」(9人)というワードが入っています。この「話を聞いてくれる」という感情が、頻出ワード上位の「優しい、安心、丁寧」の感情につながり、患者から高い評価を得ているのだと推察されます。
施設の【機能面】は二の次か…
一方、施設の【機能面】を示すワードは少ない印象でした。
「立地」のことは3人、「待ち時間」のことは5人の患者が言及している程度でした。
また、医師の【技術面】を表現した「痛くない」や「楽に受診」という類のワードも5人に留まり、これも多くない印象です。
口コミから考える医療機関が対応すべき3つのポイント
多くの患者さんが、医療機関に「優しい」、「安心」、「丁寧」を求めていることが見えてきました。
それでは、それを踏まえて医療機関は何を考えればいいでしょうか。ここでは、医療機関が対応すべきポイントを3点挙げて解説したいと思います。
- まず患者の「不安」を取り除くことから始める
- コミュニケーションの差で決まると認識する
- スタッフの傾聴スキル向上を図る
➊まず患者の「不安」を取り除くことから始める
患者の口コミから考えると、今後、患者から高い評価を得るには、最善の治療を施す以前に、まずは患者の「不安」を取り除くことを最優先に考えるべきだということが言えそうです。
そのためには、患者の話をじっくり聞いてあげることが重要です。
患者に優しく接して、患者に丁寧に説明すること。このように、患者に安心感を与えることを優先して考えることが大事になります。
➋コミュニケーションの差で決まると認識する
医療の質の良し悪しは患者に伝わりづらい
また、医療機関の評価が患者とのコミュニケーションの差で決まってしまうという現実を2点目のポイントとして挙げたいと思います。
経営面を考えると、全ての患者にたっぷり時間をかけるのが難しいことは事実としてあるでしょう。
しかし、患者には、医療の質の部分はなかなか伝わりづらいのも事実です。
口コミの評価は、医療本来の質の良し悪しより、コミュニケーションの差で決まってしまっていると言ってもいいのかも知れません。
コミュニケーションを十分に取ることで、診療の質も上がるし、患者からの評価も高まる可能性があることが、今回の口コミに関する簡単な調査からでも認識できると思います。
コミュニケーションの「4つの要素」とは?
ここで、そもそもコミュニケーションとは何なのかについて簡単に触れたいと思います。
コミュニケーションは、一般的に、「伝える力」と「受け取る力」の2つに大別されます。
さらに、コミュニケーションには「4つの要素」があると言われています。
伝える力 | 受け取る力 |
①言語(相手に論理的に説明) | ③聴く力(相手を正確に理解) |
②非言語(表情・ジェスチャー) | ④読み取る力(言葉の裏) |
医療現場では「③聴く力」と「④読み取る力」がカギになる
医療現場においては、コミュニケーションの4つの要素の「③聴く力」と「④読み取る力」がカギになりそうです。これらは、初診時の問診からフルに必要となる能力です。
いわゆる「傾聴」のスキルが重要だと言えます。この傾聴スキルについては、次項で詳しく触れたいと思います。
いずれにせよ、医療現場で行われていることはスタッフと患者とのコミュニケーションの連続です。
患者とのコミュニケーションが少なければ少ない程、患者に安心を提供できないどころか、診療上のサービスも低下してしまう可能性があると言えるでしょう。
➌スタッフの傾聴スキル向上を図る
傾聴の「3つの要件」とは?
最後のポイントとして挙げたいのは、スタッフの傾聴スキル向上の取り組みです。
先ほども触れたとおり、「③聴く力」、「④読み取る力」は初診時の問診からフルに必要となります。医療現場では、医学の知識のない患者から、疾患に関する情報をより多く引き出す必要があるからです。
カウンセラー教育に長く携わる高橋和巳氏は、話し手を楽にさせる聴き方を「傾聴」と呼んでいます。
そして、傾聴には「3つの要件」があると言っています。
- 賛成して聴く
- 黙って聴く
- 世界を代表して聴く
引用:高橋和巳著「精神科医が教える聴く技術」(ちくま新書)
研修で傾聴を学び、患者との信頼関係構築を
先ほど傾聴の3つの要件について触れましたが、皆さんもこれを見て簡単にできることではないと感じたのではないでしょうか。常にバタバタした医療現場でこれらを実践することは、そう簡単なことではないでしょう。
この困難に思える傾聴を実践するには、やはりスキルが必要になります。医療機関としては、医師、看護師、コメディカル、受付スタッフなど全スタッフを対象に「傾聴スキル向上研修」を実施して、スタッフの傾聴スキル向上を目指します。
スタッフの傾聴スキルが上がれば、短時間のコミュニケーションで患者との信頼関係を構築することができるようになります。
なお、コミュニケーション能力と傾聴スキルの重要性については、別の記事でも紹介していますのでよろしければお読みください。
まとめ
今回は、病院口コミサイトを眺めながら、患者が医療機関に何を求めているのかについてみてきました。
口コミサイトの信ぴょう性については議論の余地がありますが、医療機関として今後認識しておくべきことについて最後にまとめたいと思います。
- まずは患者の「不安」を取り除くことから始める
- コミュニケーションの差で評価が決まることを認識する
- スタッフの傾聴スキル向上を図る
今回の記事が、少しでも何かのお役に立てれば幸いです。