医療者も陥るキャリアプラトーとは?仕事の停滞感を克服する方法を解説

皆さん、いまの仕事に充実感はありますか?

若い世代は、伸びしろがありますので、たとえ失敗してもそれをとおして成長できます。成長を実感することで、仕事への意欲を維持・向上することができます。

ミドルからシニア世代はどうでしょうか。年数をかけて仕事の知識や経験を積んできて、ある程度仕事の要領は得ていると思います。

ただ、なかなか自分が成長している実感が持てず、仕事に意欲が沸いてこないということもあるかも知れません。

もし皆さんがこうした思いを抱えているのなら、それは「キャリアプラトー」と言われる状態かも知れません。

今回は、キャリアプラトーとは何かを探り、その原因や対策について考えていきたいと思います

目次

キャリアプラトーとは?

前述したキャリアプラトーという言葉、皆さんはご存知だったでしょうか?「キャリアプラトー」とは、簡単に言うとキャリアにおける停滞状態を指します。

キャリアプラトーとは「停滞状態」

プラトーとは、「高原」や「台地」と訳される言葉です。

標高の高い山をイメージするとわかりやすいかも知れません。登っていくと高原が現れますが、あとは平坦な地形が続いていくのが想像できるでしょう。

要するに、キャリアプラトーとは、自身の仕事における成長の実感や可能性が感じられなくなって、これ以上伸びしろを見いだせない停滞期にある状態を言います

一般的にはミドル層やシニア層に多くみられる

キャリアプラトーは主にミドル層やシニア層に多くみられるとされています。今で言えば就職氷河期世代がそれに当たると思われます。

この世代は就職難に見舞われ、その後も給料が伸び悩み、上が詰まってポストにも恵まれず、行き詰まりを感じている人も少なくないのではないでしょうか。

医療者では中堅看護師に懸念あり

医療機関においては、中堅と言われる5年目以降の看護師のキャリアプラトーが指摘されることがあるようです。そこから垣間見えるのは、単調な日常業務や研修機会の減少、職位の停滞などが挙げられます。

次からはキャリアプラトーの原因や、その影響についてみていきたいと思います。

キャリアプラトーの4つの原因

一般的に、キャリアプラトーが見受けられる人には、以下のような原因が考えられます。

キャリアプラトーの4つの原因

①業務のマンネリ化
②業務が過大
③昇進の停滞
④職場環境や人間関係の影響

①業務のマンネリ化

同じ業務に長い間従事していると、仕事への慣れが生じてくるため、自分の業務に対する停滞感が発生します。

②業務が過大

自分の能力よりも業務量が過大となり、目の前の仕事に追われている状況が原因となります。変化が激しい現在にあっては、管理職であっても、プレイングマネージャー化せざるを得ません。

日々の仕事に忙殺され、新たな挑戦をしたくてもそれができずに、仕事に喜びを見いだせない状況が停滞感を引き起こします。

③昇進の停滞

ポストに恵まれず昇進の可能性が見いだせない場合は、仕事に対する意欲を維持・向上させるのは難しいと言えます。

④職場環境や人間関係の影響

評価制度や目標管理制度が整備されていない、または、あっても形骸化している場合が原因ともなります。

公正な評価の手段がなければ、自分は頑張っているのに、なぜか周りばかりが評価されていると従業員に感じさせ、仕事への意欲減退につながります。

キャリアプラトーの影響とリスク

ここでは、キャリアプラトーによるリスクについて考えたいと思います。

本人側のリスク3点管理者側のリスク2点に分けてみていきたいと思います。

本人側のリスク管理者側のリスク
モチベーションの低下人材流出のリスク
パフォーマンスの低下組織力の低下
心理的・身体的な健康への影響
キャリアプラトーの影響とリスク

【本人①】モチベーションの低下

仕事への停滞感を感じると、当然モチベーションが低下します。本人は基より、周囲のスタッフのモチベーションにも悪い影響を与える可能性があります。

【本人②】パフォーマンスの低下

仕事へのモチベーションが低下すれば、おのずと仕事のパフォーマンスが低下する可能性が高まります。

【本人③】心理的・身体的な健康への影響

自己肯定感が下がり、自信喪失によりメンタル不全に陥るリスクもあります。

【管理者①】人材流出のリスク

本来は、要職に就いて組織を引っ張る立場ともなるミドル層の流出は、組織にとっては人事上の多大な損失につながります。

【管理者②】組織力の低下

ミドル層の流出により、組織のバランスが悪化すれば、組織力が低下するリスクも考えられます。ミドル層の労働意欲の停滞により、個々が業務上の成果をあげられない状況は、組織にとってはマイナスでしかないため、何らかの手を打つ必要があります。

キャリアプラトーを乗り越えるための方法

これまで、キャリアプラトーの原因やそれに伴うリスクについてみてきました。それでは、キャリアプラトーを乗り越えるための対応策はあるのでしょうか。

これにも、本人自らが対応するもの4点と、管理者が対応すべきもの4点と、2方向から考える必要がありそうです。

本人の対応策管理者の対応策
メンターやキャリアカウンセリングの利用日常の声掛けや1on1で動機付け
キャリアデザインの再構築評価制度や目標管理制度の導入、再構築
自己成長のための目標設定リスキリングで新たな知識やスキルの醸成
新たなスキルの習得と資格取得適切な配置、昇進、ジョブローテーション
キャリアプラトーを乗り越えるための方法

本人側の対応策から順にみていきたいと思います。

【本人①】メンターやキャリアカウンセリングの利用

職場にメンターキャリアカウンセリングの制度があれば、面談をとおして今後のキャリアについて考え直すことができます。

キャリアカウンセリングについては、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会の運営するサイトから個人登録のうえ利用することができます。

キャリアコンサルタント検索|キャリアコンサルタントWebサイト (mhlw.go.jp)

【本人②】キャリアデザインの再構築

もしメンターやキャリアカウンセリングの機会がなければ、自身で自己分析して、改めてキャリアデザインの再構築を進める必要があります。現時点でキャリアデザインのイメージがなければ、これを機会に構築することをお薦めします。

その前提として、キャリアアンカーの考え方を用いて、自身が譲ることのできないキャリアの志向について内省を深めることが重要です。

【本人③】自己成長のための目標設定

何よりも日々の業務から成長を実感していくことが大事になります。職場に目標管理制度があれば、上司との面談をとおして来期の目標を設定し、上司とともに達成度を評価していきます。

制度自体がなければ、自身でマイルストーンを設定し、自ら評価して次の目標へ進む仕組みをつくります。いかに自己管理していくかが問われますが、初めから大きな目標を立てずに、すぐ取り掛かれそうな小さな積み重ねでいいと思います。

【本人④】新たなスキルの習得と資格取得

目標が定まったら、その目標に向けて必要となるスキルを習得していきます。その目標に向けて資格を取るのもいいでしょう。新たな目標ができ、資格取得のコミュニティに参加することで、人間関係が広がります。そこで視野が広がったり、刺激が生まれ、業務に対するモチベーション向上にもつながります。

【管理者①】日常の声掛けや1on1で動機付け

ここからは、管理者側に求められる対応策になります。

若手社員には仕事の進捗で声掛けすることも多いと思いますが、ミドル層にはなかなかしないということもあるかも知れません。その場合、ミドル層の動機付けが不足しモチベーション低下につながります。若い世代と変わらず、普段からの声掛けが何より効果的です。

もし1on1制度があれば、早期に個人の停滞感を汲み取り、共に乗り越えることができるかも知れません。今後のキャリアの志向に関して本人と組織で共有できれば、本人にとって有意義なキャリア形成を用意することができます。

【管理者②】評価制度や目標管理制度の導入、再構築

社員の士気を維持向上するためには、公平公正な評価を行う制度を導入する必要があります。導入されていても、もし形骸化している場合は制度の再構築が必要です。

目標管理は、本人が経験値よりも少し高めの目標をあえて設定して、その達成度についてお互い進捗管理をしていくことが大事です。

【管理者③】リスキリングで新たな知識やスキルの醸成

業務上のスキルアップは個人任せにせずに、適切な研修機会の提供リスキリングで新たな知識やスキルの醸成を図り、人材開発を行うことが重要です。

【管理者④】適切な配置、昇進、ジョブローテーション

公平公正な評価によって、適切な配置や昇進を行っていくことが基本になると思います。当然、企業によってポストは定数に限りがあると思います。ポストが増やせない場合は、定期的なローテーションを行い、業務転換と環境変化を与えて士気の向上を図ることが大事になります。

まとめと今後に向けて

これまで、キャリアプラトーの意味や原因、その対応策について考えてきました。

もし、皆さんのなかで自分にあてはまると感じた方がいる場合は、これがいい機会になるかも知れません。

いまの停滞した状況からステップアップするためのチャンスと前向きに捉えて、次なるステージに進むことを期待しています。

そのためには、これを機に自身と向き合い目の前の仕事に注力して、日々の仕事から少しずつでも成長を感じていくことが何より大事になりそうです。

少子高齢化の進展により、若い世代の人手不足はこの先も続きます。管理者側は、当然いまもこの先も起こり得る組織上の重要課題として、ミドル層の活用に資する人事施策を打ち出すことが重要です。

今回の記事が、少しでも何かのお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

吉澤社労士事務所代表。社会保険労務士、日本FP協会AFP認定者。医療機関で25年間事務職に従事。総務、経理、医事、健診部門など幅広く経験を積み、2024年4月に独立。地元・東京都日野市にて医療機関専門社労士として活動中。
医療機関に役立ちそうな情報を発信していきますので、今後ともよろしくお願いします。

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