医療従事者が知っておきたいイデコのメリット・デメリット・注意点

皆さんは、iDeCo(イデコ)という制度を活用してますか?

イデコとは、個人型確定拠出年金のことを言います。自分で掛け金をかけて、自分で運用して、かけた分を60歳以降に年金や一時金で受け取ります。

イデコは、公的年金とは別に、老後に備えて自分で作る、私的年金です。

2024年から新NISA制度が始まり、日本の株式市場が盛り上がるひとつのきっかけになっているようです。

世間では、新NISAばかりが目立ち、イデコはその陰に隠れているように見えます。

ただ、イデコこそ資産形成をする我々世代にとって、強い味方になってくれる制度と言えるかも知れません。

今回は、イデコの制度内容やメリット・デメリット、利用する際の注意点などについてみていきたいと思います。

目次

資産所得倍増プランでイデコも制度拡充へ

年初から盛り上がりを見せている新NISAですが、旧NISA制度と比べ、利用者の利便性が格段に上がりました。

そして、今回紹介するイデコも、岸田政権が掲げる資産所得倍増プランにより、今後さらなる制度の拡充が見込まれています。

国は、利用者にとって魅力を感じる節税効果をイデコに用意し、老後に向けた資産形成を後押ししています。

その背景では、少子高齢化の急速な進展により、公的年金だけでは豊かな老後を送るのが難しいことを、国は暗に示しているようです。

イデコの特徴を紹介

ここでは、イデコの制度の概要について、簡単に押さえておきたいと思います。

①会社員や自営業者が加入対象

会社員や自営業者が加入することができます。加入は任意です。以前は60歳未満までの加入でしたが、2022年5月から65歳未満までの加入ができるようになりました

②毎月掛け金を拠出

毎月掛け金をかけていきます。月額5,000円から設定可能で、1,000円単位で設定できます。年に1回に限り金額の変更ができます。一時的な拠出の停止もできます。

加入者の属性掛け金の上限が変わります。自営業者は月68,000円、会社員は月23,000円、公務員は月12,000円が上限になります。会社員は自社の企業年金の有無でも、掛け金の上限額が変わります。

③自分で運用指図を行う

自分で運用指図を行います。その運用次第で、将来受け取ることができる受給額が変わります

元本割れリスクのある投資商品もあれば、元本割れリスクのない預貯金も運用の対象となります。

例えば、100%日本株の投資信託に運用指図することもできますし、60%を日本株にし、残りの40%を海外株式の投資信託にするといったように、運用対象とその割合を自分で指図します。

④節税メリットが大きい

話題の新NISAよりも節税効果が高いと言われています。その理由は、拠出時、運用時、受給時3段階で税優遇があるからです。これはイデコの最大の特徴と言えます。詳細は後述します。 

⑤年金か一時金で受け取る

60歳以降に、かけた分の受け取りができます。年金もしくは一時金として受け取るかを選択します。年金と一時金を併給することもできます。

イデコのメリット・デメリット、注意点とは

ここでは、イデコのメリットやデメリット、注意点についてみていきたいと思います。

イデコのメリット3つ

①節税メリット活用で効率的な資産形成が可能

拠出時、運用時、受給時の3段階で税優遇があるため、そのメリットを活かして効率的に資産形成をすることができます。 


●拠出時:掛け金全額所得控除になるため、所得税・住民税が軽減されます。掛け金をかけ続ける必要がある現役世代にとって、この節税効果は大きいです。

●運用時:運用中は、非課税で資産を増やしていけます。通常であれば、所得税と住民税を合わせて20.315%の税金が運用益にかかります。イデコで購入した投資信託等の商品で受けた売買益や、預貯金の利息などには税金がかかりません。

●受給時:受給時には、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の優遇が受けられます

節税メリットをシミュレーションをしてみます。(「ろうきんiDeCoスペシャルサイト 節税シミュレーター」参照)

あくまでシミュレーション上の参考値としてご覧ください

年収400万円・30歳独身の方が、
毎月10,000円を60歳まで30年間拠出した場合
、節税メリットは以下のとおりとなります。
(移換資金 0万円・運用利回り3.0%・受給開始年齢60歳・一括一時金受取、を想定)

●拠出時:年間18,100円・30年間の累計541,400円、の優遇が受けられます。

●運用時:想定運用益2,187,130円×約20%=438,496円、がそのまま非課税となります。

●受給時:積立元本3,600,000円+想定運用益2,187,130円=5,787,130円、をそのまま受給できます。(イデコのみを想定した金額)

iDeCoの節税シミュレーター|iDeCoスペシャルサイトbyろうきん (rokin-ideco.com)

参考:ろうきんiDeCoスペシャルサイト

②自分年金で老後の安心感

少子高齢化により支え手が減少している状況下では、公的年金だけでは豊かな老後を送るのは心配です。

プラスアルファとして自分年金を準備しておけば、老後の安心材料になると思います。

③運用がうまくいけば資産が増やせる

株式を含んだ投資信託で運用する場合、損失リスクは伴うものの、運用次第で大きな利益が得られる可能性があります。

イデコのデメリット3つ

①60歳まで受給できない

受給開始は60歳以降になるため、急な入用でお金が必要になった場合でも、60歳までは引き出すことができません。また、60歳になったとしても、加入期間が10年に満たない場合は、加入期間によって受給開始時期が異なります。

イデコはあくまでも、老後資金のためのものと割り切ることが必要です。簡単に引き出せないことは、逆にメリットにもなります

②元本割れリスクがある

選んだ商品や自分の運用次第で、老後に受け取れる金額が変わります。元本割れするリスクは伴います。金利や為替リスクなどを見越した運用が求められます。

③口座管理料がかかる

●加入時:加入の際に2,829円かかります。
●運用時:毎月171円+αがかかります。
●受給時:振込の都度440円がかかります。

イデコの注意点2つ

①制度が複雑なため勉強が必要

個人事業主か、企業に属しているかで掛け金の上限が変わります。企業に属していても、企業年金の有無で条件が変わります。

また、節税効果が最大のメリットですが、そもそも税制に詳しくないとイデコを利用する本来の価値が理解できません

投資初心者にとっては、選ぶ商品も様々あり、元本割れするリスクもあるため、利用のハードルが高く感じられるかも知れません。

前述したメリットとデメリットを吟味して、自身でもリスクとリターンの関係や、税制などについて勉強したうえで、利用の判断をすることが大事です。

②手続きに時間がかかる

申込から加入手続き完了まで、1~2ヶ月はかかることを覚悟しておいた方がいいと思います。

申込んだ金融機関と国民年金基金連合会との間で、書類のやり取りがあることや、加入資格の審査があるため時間がかかります。

利用開始を決心したら、早めに行動に移すことをお勧めします。

医療従事者が考えておきたい3つのこと

医療機関で働く方々は、日々の診療業務の忙しさから、自身のお金に向き合う機会も、なかなか取れないかも知れません。

ここでは、医療従事者がイデコで資産運用を行ううえで、考えておきたいことについて、触れておきたいと思います。

①イデコによる計画的な資産形成をすることで、経済的自立に近づき、老後に対する心配を減らします。

②不安の解消により、仕事に集中できるため、医療者としての専門性発揮につながります。

③専門的な知識・スキルの蓄積が、職場に依存しない自律的なキャリア形成を可能にします。

医療の専門家としては、経済的な不安を極力解消し、仕事に集中して専門性を高め自律的に働いていくことが望まれます。

そのためには、税優遇の恩恵を最大に受けられるイデコを利用して、効率的に資産形成を行うことが有力な選択肢のひとつとなりそうです。

資産形成の成功体験を少しずつ積み重ねることは、金融リテラシーの向上にもつながります。

60歳まで引き出せないデメリットは、イデコの最大の強みにもなる

私は、長らく勤めてきた医療機関を退職し、個人事業を始めるタイミングで、イデコの申し込みを行いました。

私が感じるイデコの最大の強みは、60歳まで引き出せないがゆえの、強力な貯蓄性にあると思っています。

このイデコの不便さこそが、最大のメリットになり得ます。なぜなら、運用益が出ると、人はすぐに売却して利益を確定したがるからです。イデコではこれができません。

イデコは60歳まで壊せない貯金箱と捉えて、割り切って活用することが重要です。

まとめ

いま話題の大きい新NISAは、非課税メリットを享受しつつ、自身の資産の最大化を後押しできる制度として整備されました。

ただ、元本割れが怖く、安全かつ着実に資産形成をしていきたい人は、まずは職場の財形制度を使って貯蓄を始めていくのがいいと思います。

そして、ある程度資金が貯まった段階で、イデコも追加して本格的に資産運用を始めていくのでも、遅くはないと思います。

医療機関においては、スタッフの経済的自立を後押しするためにも、積極的にイデコ活用のアナウンスをされてみてはいかがでしょうか。

スタッフの経済的自立金融リテラシーの向上は、組織に対するエンゲージメントを高める可能性があります

今回の記事が、少しでも何かのお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

吉澤社労士事務所代表。社会保険労務士、日本FP協会AFP認定者。医療機関で25年間事務職に従事。総務、経理、医事、健診部門など幅広く経験を積み、2024年4月に独立。地元・東京都日野市にて医療機関専門社労士として活動中。
医療機関に役立ちそうな情報を発信していきますので、今後ともよろしくお願いします。

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