みんなが知っておきたい新NISAのメリット・デメリット・注意点とは

2024年7月11日の日経平均株価は、終値で42,224円2銭をつけ、史上最高値を更新しました。

2024年初頭から新NISA制度が始まり、日本の株式市場が盛り上がるひとつのきっかけになっているようです。

これまで別の記事では、私たち現役世代が上手に活用していきたい、財形貯蓄やiDeCo(イデコ)について取り上げてきました。

ただ、世間の話題は、新NISAのことでもちきりです。一体、この新NISAとは、どんな優れた制度なのでしょうか。

今回は、その新NISAの制度内容やメリット、デメリット、利用するうえでの注意点などについてみていきたいと思います。

目次

NISA制度大幅改正の背景にあるものとは

この新NISAですが、岸田政権が掲げる資産所得倍増プランの一環として、2024年に大改正が行われました。これにより、旧NISA制度と比べ、利用者の利便性が格段に上がったのです。

「貯蓄から投資へ」

「貯蓄から投資へ」。よく聞くフレーズですが、ここには、国民の財布の中で眠らせているお金を投資に回させて、国民と経済全体を豊かにしたい、という国の思惑があります。

昔は、限られた富裕層だけが投資に参加してましたが、今はスマホひとつで投資ができる時代です。

今後は、大多数を占める中間層を投資に参加させ、幅広い層が資産を増やせる仕組みを作ることが重要であると国は考えました。

そのために、投資で得られる儲けに対して、税金は取らないNISA制度の仕組みを大幅に拡充した、というのが今回の制度改正の背景になります。

自己責任で老後資金をつくる時代に

国は、使い勝手の悪かった従来のNISA制度を大幅に改正し、私たちに老後に向けた資産形成をするよう後押ししています。

その裏には、少子高齢化が急速に進展するなか、公的年金だけに頼らず、自己責任で老後資金をつくるよう国が暗示しているかのように思えます

新NISA制度の特徴とは

ここでは、新NISA制度の特徴について、簡単に押さえておきたいと思います。

①日本に住む18歳以上が対象

日本に住む18歳以上であれば誰でも利用できます。これにより、若いうちから将来のライフイベントに向けて、計画的に資産形成ができます

②投資期間の恒久化

投資期間が恒久化されたことにより、どの時点からでも安心して資産形成を始めることができるようになりました

③非課税期間は無期限

旧制度は、一般NISAが5年、つみたてNISAが20年と、期間限定のルールがありました。

新制度では、非課税期間が無期限となりましたので、非課税メリットを一生涯受けながら、じっくりと効率的に資産を増やすことができます

④年間の非課税枠がある

年間の非課税枠として、「つみたて投資枠」120万円「成長投資枠」240万円の、合計360万円の上限が設定されました。

旧制度では、一般NISA120万円とつみたてNISA40万円の上限設定があり、これらの併用もできませんでした。

新制度では、つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用もできますし、従来より上限金額も上がったことで、資産形成の強力な後押しとなっています

⑤生涯投資枠は1,800万円

生涯投資枠は1,800万円で、このうち成長投資枠は1,200万円と上限が決められています。

旧制度のつみたてNISAでも、最大20年間で800万円までが上限でしたので、投資元本だけで1,800万円確保できれば、追加の老後資金としては充分と言えます

⑥投資対象は元本割れリスクがある商品のみ

投資対象は、元本割れリスクのある商品のみで構成されています。つみたて投資枠と成長投資枠で、それぞれ商品設定がされています。

つみたて投資枠の商品は、金融庁が選定した長期投資に適した商品で構成されています。

一方、成長投資枠は、一定の共通条件を満たしていれば、取り扱う金融機関で設定できますので、価格変動の激しい商品や、販売手数料の高い商品も含まれます。

制度を利用する際には、投資対象の選定が、極めて重要となります

新NISAのメリットやデメリット、注意点

ここでは、新NISAのメリットやデメリット、注意点についてみていきたいと思います。

新NISAのメリット3つ

①運用益が出ても課税されない

配当や売却時に得られた利益があっても、一切課税されません。これがNISA制度の最大のメリットです。

そのため、積極的に投資に参加することができますし、何より効率的に資産を増やすことが可能になります

②非課税の上限額まで売買を繰り返せる

旧制度にはなかった「投資枠の復活」ができるようになりました

このおかげで、非課税の上限額まで商品の売買を繰り返すことができ、より柔軟に資産の最大化を図りやすくなりました

例えば、NISA口座で10,000円分購入した商品が値下がりしそうなとき、全て売却したとしても、その翌年には10,000円分の投資枠は復活し、また別の値上がりしそうな商品を10,000円分買うことができます。

③長期積立投資に最適

投資期間の恒久化や、非課税期間の無期限化により、非課税メリットを長期間享受しながら、じっくり資産形成を行える環境が整いました

投資で結果が得やすい長期積立投資を新NISAで実践していくことで、老後資金の確保がかなり現実的なものとなりました。

新NISAのデメリット3つ

①元本割れするリスクがある

イデコと異なり、預貯金などの元本保証型の商品が選べません。常に価格変動リスクにさらされ、元本割れする可能性があります

自身のリスク許容度に応じて、運用することが求められます。

②利益が出ないと非課税メリットが受けられない

運用上の利益が出ない限り、NISA制度の最大のメリットである非課税の恩恵が受けられません

NISA制度の非課税メリットを最大限に発揮するには、より多くの利益が見込める商品を購入することがカギになります。

③他の口座との損益通算ができない

これは所得税の計算上の話で、NISA口座で損失が出た場合は、他口座と損益通算できないため、税金を安く抑えられないというものです。

例えば、AとBの2つの口座を持っている場合を考えてみます

A口座で10,000円の利益が出たものの、B口座で7,000円の損失が生じた場合、通常はAとBで損益通算して3,000円の利益として、所得税の計算ができます。
そうすると利益の3,000円×20%=600円と、税金を安く抑えることができるのです。

もしBがNISA口座となると、7,000円の損失が出たとしても、A口座との損益通算ができないため、A口座の利益10,000円×20%=2,000円の税金となります。

損益通算できた時と比べると、1,400円も多く税金を納めないといけません。(※ここでは説明を簡略化するため、税金の掛け率を20%として計算しています)

新NISAの注意点3つ

①商品選定や運用のための勉強が必要

つみたて投資枠で約300本、成長投資枠に至っては2,000本以上の商品があります。そこから商品を選んで購入し、運用し続けるには、投資に関する相当の勉強が必要です。

投資で成果を上げて、資産を築いていくためには、世界経済の情勢から、投資におけるリスクとリターンの関係、運用中の成績や手数料の安さなどの商品に関する情報まで、常に勉強し続けることが重要になります。

②目的を明確にして長期運用を心掛ける

新NISA制度では、売却してもその翌年には投資枠の復活ができるようになりました。

旧制度では、一度売却したらその枠は消滅していましたので、より柔軟に資産形成をすることができるようになりました。

ただ、裏を返すと、1年前後の短期投資もできてしまうため、投資効果の得やすい長期投資から外れる行動を取りがちになります

資産形成の目的を明確に持って、長期目線で運用を心掛けることが、豊かな投資につながると思います。

③公的年金・イデコ・NISA等の活用を総合的に考える

新NISAは、元本だけでも1,800万円の資産形成ができる制度です。投資枠上限まで入金できれば、老後資金の問題も解消に近づけます。

ただ、他にも公的年金やイデコといった制度があります。

老後に受け取る予定のそれらの年金を含め、自身が必要とする収入と支出のバランスを総合的に考えて、NISA制度の活用を考える必要があります

資産は多いに越したことはありませんが、人生には限りがあります。資産の取り崩しをどうするかといった、出口戦略を考慮する必要もあります。

もっと早くから資産運用を始めたかった…

私は、長らく医療機関に勤めてきましたが、30代中頃までは、ほぼ無計画に給料を使っていました。

40歳に近づくにつれ、ようやく自分のお金と向き合うようになり、その時期から生命保険の見直しをしたり、資産運用を始めたりしました。

旧制度から、NISAも活用して運用を続けています。今までの使いづらさが嘘だったかのように、新NISAでは資産の最大化が格段に期待できるようになりました。

もっと早くから資産運用を行うべきだったと、今さらながらに思います。

自身のお金と向き合う時間を

日々の業務の忙しさから、時間がそのまま流れていっている人は少なくないと思います。

ただ一度、自身のお金のことと向き合う時間を取ることを、ぜひお薦めしたいと思います。

投資は、長期で行うほど利益が得られる確立が高いことは、よく知られていることです。若い世代はもちろんのこと、ベテラン世代でも遅いことはありません。

NISAは少額からでも利用可能ですので、ここで利用の検討をしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

投資初心者にとっては、投資は怖いものと、なかなか踏み出せずにいる人もたくさんいると思います。

元本割れが怖く、安全かつ着実に資産形成をしていきたい人は、以下の手順でじっくり資産づくりについて考えていくことをお勧めします。

① 職場の財形制度を利用して、安心安全に貯蓄を進めていく

② ある程度資金が貯まり、心に若干の余裕ができた段階で、イデコも追加して本格的な資産運用開始

③ ①と②で金融リテラシーが上がったところで、さらに新NISAで追加運用し、資産の最大化を目指す

これにより、職場においては、経済的な自立が近づき、自律的なキャリア形成が可能になります。

そして、人生の選択肢を確実に増やすことができるようになるのです。

今回の記事が、少しでも何かのお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

吉澤社労士事務所代表。社会保険労務士、日本FP協会AFP認定者。医療機関で25年間事務職に従事。総務、経理、医事、健診部門など幅広く経験を積み、2024年4月に独立。地元・東京都日野市にて医療機関専門社労士として活動中。
医療機関に役立ちそうな情報を発信していきますので、今後ともよろしくお願いします。

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